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후계자 (hugyeja) — ドラマで会長が倒れると必ず出てくる、あの言葉

후계자 (hugyeja) は、ある物事や人の後を継ぐ人、という意味です。韓国ドラマを何本か見れば、この単語は必ず耳に引っかかります。会長が病室に横たわり、廊下では兄弟たちが腕を組んで立っていて、弁護士が書類の封筒を持って入ってくる。そして誰かが低い声で尋ねるのです。それで、後継者は誰なんだ、と。

ところが、この言葉はドラマの外でも生きています。創業40年のカルグクス屋の扉に貼られた案内文にも、田舎の村の会館に掛かった横断幕にも、テコンドー道場の館長先生の話にも出てきます。今日は、この重みのある単語が実際にどんな場面で、どんな温度で使われているのかを覗いてみます。

후계자 のニュアンスを一言で言えば「重み」です。単に次の人ではなく、受け継ぐべきものがある次の人。受け継ぐ対象は、会社かもしれないし、店かもしれないし、技かもしれないし、組織のトップの座かもしれません。共通しているのは、それが一朝一夕にできたものではないということ、だから引き継ぐ人には責任がついてくるということです。ですから韓国の人は、この単語をどこにでも使ったりはしません。今日退職する同僚が自分の業務を引き継ぎながらこの言葉を使ったら、聞いた人は笑ってしまいます。冗談に聞こえるからです。

후계자

国立国語院の辞書で確認する

후계자 (名詞) 어떤 일이나 사람의 뒤를 잇는 사람. [en] successor; heir; inheritor — A person who inherits and continues a certain task or duty of another person. [ja] こうけいしゃ【後継者】。あとつぎ【後継ぎ】 — 業務や家の後を継ぐ人。 [es] sucesor, heredero — Persona sucede a alguien o sobreviene en su lugar, como continuador de él. [zh] 继承人,接班人,后继者,传人 — 继承某事或某人的人。 ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)

ポルトガル語の語釈は辞書に収録されていないため、以下は当方で訳したものです: sucessor, herdeiro — pessoa que dá continuidade ao trabalho ou ao papel de outra pessoa.

辞書に収録されている実際の用例のうち、五つを原文のまま引用します。

후계자에게 계승되다. 최근 재벌가 형제들 사이가 후계자 자리를 두고 균열될 조짐을 보이고 있대요. 두목이 죽자 후계자 문제로 조직 내에 격렬한 내분이 일었다. 그 기업은 둘째 아들이 후계자가 되었다면서? 영농 후계자. ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)

それぞれの例文が、どんな場面から出てきた言葉なのかを見ていきましょう。

  • 후계자에게 계승되다 (hugyejaege gyeseungdoeda) — いちばん硬い文語体です。企業の紹介文、新聞記事、文化財の案内板などに使われます。「계승되다」は「受け継がれる」という意味で、無形文化財の技や宗家の伝統を説明するときに、この組み合わせがよく登場します。
  • 최근 재벌가 형제들 사이가 후계자 자리를 두고 균열될 조짐을 보이고 있대요 (…hugyeja jarireul dugo…) — 「~대요」で終わっているところを見ると、ニュースを読んで隣の人に伝える口調です。「후계자 자리를 두고」は「その座を巡って競い合いながら」という意味で、韓国ドラマのあらすじ紹介には、ほぼ定型のように出てくる表現です。
  • 두목이 죽자 후계자 문제로 조직 내에 격렬한 내분이 일었다 (dumogi jukja hugyeja munjero…) — 暴力団や犯罪組織を描いた物語の一文です。ここでの「후계자 문제」は「次のトップを誰にするかという問題」をまるごと指す、ひとかたまりに固まった言い回しです。
  • 그 기업은 둘째 아들이 후계자가 되었다면서? (geu gieobeun duljjae adeuri hugyejaga doeeotdamyeonseo?) — 前の二つとは違って、完全な話し言葉です。「~다면서?」は「聞いたんだけど、本当?」と確認するタメ口の語尾で、友達同士で噂をやりとりする場面で使います。
  • 영농 후계자 (yeongnong hugyeja) — 「영농」は農業を経営するという意味です。この組み合わせは個人の物語というより、行政用語に近いものです。韓国政府は以前から、農村を離れずに農業を続けようとする若い人たちを支援してきました。その対象を指す名称として、この言葉が定着したのです。辞書に併記されている「농어민 후계자」も同じ系列です。

実際の会話で見る

場面:土曜日の朝の在来市場。創業40年の餅屋の前ですが、いつも座っているおばあさんの代わりに、見たことのない中年の女性が蒸し器を抱えています。

ジュンギョン: 어? 저 집 할머니 안 계시네. 오늘은 저 아주머니가 하시나 봐. あれ? あの店のおばあさん、いないね。今日はあのおばさんがやってるみたい。

エミリー: 아, 저분 딸이래. 할머니 무릎 수술하시고 나서 딸이 후계자로 들어왔대. ああ、あの人、娘さんなんだって。おばあさんが膝の手術をしてから、娘さんが後継者として入ったらしいよ。

ジュンギョン: 진짜? 야, 넌 그런 걸 어떻게 다 알아. ほんとに? ねえ、そういうの、どうやって全部知るの。

エミリー: 지난주에 줄 서다가 옆에서 다 들었지. 근데 떡집에 후계자라는 말 붙으니까 좀 웃기다. 先週、並んでるときに隣で全部聞こえちゃったの。でも餅屋に「後継者」なんて言葉がつくと、ちょっと笑っちゃう。

ジュンギョン: 웃기긴. 40년이면 그게 가업이지. 드라마 회장님들만 쓰는 말 아니야. 何が笑えるの。40年なら立派な家業だよ。ドラマの会長さんたちだけの言葉じゃないんだから。

エミリー: 하긴. 맛만 그대로면 나야 후계자든 회장님이든 상관없어. 確かに。味さえ変わらなければ、後継者だろうが会長だろうが、私はどっちでもいいけどね。

こう使うと不自然です

✗ (退職する先輩が後輩に)김 대리, 오늘부터 자네가 내 후계자야. ✓ (退職する先輩が後輩に)김 대리, 오늘부터 자네가 내 후임이야. → 会社でポストを一つ引き継ぐことは「후임 (huim)」または「후임자」です。후계자 は、家業・組織全体・トップの座のように、引き継ぐ対象が大きい場合に使います。業務の引き継ぎに使うと、自分を会長になぞらえる冗談のように聞こえてしまいます。

✗ 아버지가 돌아가시고 제가 후계자가 되어서 집을 물려받았어요. ✓ 아버지가 돌아가시고 제가 상속인이 되어서 집을 물려받았어요. → 財産を法的に受け継ぐ人は「상속인 (sangsogin)」です。후계자 は財産ではなく、役割と仕事を継ぐ人のこと。お父さんがやっていた店を引き継いで営むのなら、そのときは 후계자 で正解です。

場面別の応用例文

場面 1 — 行きつけの店が変わったとき 長く通っていたカルグクス屋に行ったら、厨房に見慣れない人が立っています。隣の席のお客さんに尋ねると、こう返ってきます。

이 집 손칼국수, 이제 따님이 후계자예요. 국물 맛은 그대로던데요? (i jip sonkalguksu, ije ttanimi hugyejayeyo. gukmul masdeun geudaeodeonde-yo?)

丁寧語の文で、「~예요」で終わるので柔らかい響きです。ここでの 후계자 は、大げさな継承の儀式を意味しているのではなく、「この店を引き継いでやっている人」という、あっさりした指し示しです。

場面 2 — 師匠と弟子のあいだ 創業30年のテコンドー道場。館長先生が引退を控えているという噂が流れると、練習生たちが話し始めます。

관장님은 진작에 후계자를 정해 두셨대. 사범님 중에 제일 오래 계신 분. (gwanjangnimeun jinjage hugyejareul jeonghae dusyeotdae. sabeomnim jung-e jeil orae gyesin bun.)

タメ口で、「~대」で終わることから、人づてに聞いた話であることが分かります。武術・工芸・音楽のように、人から人へ技が渡っていく分野では、この単語はとても自然に響きます。

場面 3 — 自分をへりくだって言うとき 家業を継いだ若い社長が、インタビューで謙遜して言います。

저는 후계자라기보다 아직 심부름꾼이에요. 어머니가 다 가르쳐 주시는 중이라서요. (jeoneun hugyejaragiboda ajik simbureumkkuniyeyo. eomeoniga da gareuchyeo jusineun jungirasseoyo.)

「A라기보다 B」は「A というよりは B だ」という謙遜の型です。후계자 という言葉の重みが負担に感じられるとき、韓国の人がよく使う典型的な「かわし方」です。

丁寧語・タメ口と、似た表現

후계자 は名詞なので、それ自体に敬意の上下はありません。文末を「후계자입니다 (hugyejaimnida)」「후계자예요 (hugyejayeyo)」「후계자야 (hugyejaya)」と変えることで、丁寧さを調節します。ただし、他人を指すときに「후계자분 (hugyejabun)」のように「~분」を付けると、ぐっと丁寧になります。

似ているようで、立ち位置の違う言葉を並べてみると、こうなります。

表現温度・強さ使われる場面
후계자 (hugyeja)重く、公式的家業・企業・組織のトップ・伝統の技を継ぐ人
후임 / 후임자 (huim / huimja)中立・事務的会社・軍隊・公的機関で同じポストを引き継ぐ人
상속인 (sangsogin)法律的・乾いた響き財産を法的に受け継ぐ人。遺言状・裁判所の書類
후배 (hubae)近しく、日常的同じ学校・職場に後から入った人。継承とは無関係
대를 잇다 (daereul itda)温かく、物語的家や店を世代から世代へ受け継いでいくことを述べるとき

とくに 후배 と混同しないようにしましょう。発音は似ていますが、후배 は単に自分より後に入ってきた人というだけで、何かを受け継ぐという意味はまったくありません。

文化背景 — 「後を継ぐ」という言葉の重み

후계자 は漢字語です。後(のち)+ 繼(継ぐ)+ 者(人)で、そのまま「後を継ぐ人」。一文字ずつ分解してみると、辞書の語釈とぴったり重なることが分かります。韓国語には、このように漢字三文字が意味をそのまま組み立てた単語が多いので、漢字文化圏の学習者なら、この構造を覚えておくと、初めて見る単語でも半分は推測できるようになります。

この単語が韓国ドラマでとりわけよく聞こえてくる理由は、はっきりしています。韓国の大衆物語において、家族経営の企業をめぐる継承争いは、もはや一つのジャンルに近いのです。『相続者たち』(SBS、2013)や『財閥家の末息子』(JTBC、2022)といった作品を思い浮かべてみれば、誰が次を継ぐのかという問いひとつが、登場人物たちの恋も裏切りも復讐も、すべて引っ張っていくことが分かります。ドラマで会長が倒れる場面は、ほとんどいつもこの単語の合図です。セリフをそのまま引かなくても、その状況にはきっと見覚えがあるでしょう。病室の外の廊下、互いに目を合わせない兄弟たち、そして、まだ誰も口に出していないあの名前。

同時に、この言葉にはずっと静かな顔もあります。辞書の例文に出てきた「영농 후계자」がそれです。農村の人口が減っていくあいだ、都市へ出ずに親の田畑を継ぐと決めた若い人たちがいて、その人たちを呼ぶ名前が必要でした。財閥家の後継者と、田舎の村の営農後継者が同じ単語を使っているという事実は、この言葉が結局のところ財産の大きさではなく、誰かが止まったところから、もう一度始めるという行為を指しているということを意味しています。

ですから、さきほどの市場の会話でジュンギョンが言ったことは、なかなか正確でした。40年なら餅屋だって家業ですし、その扉をもう一度開ける人は、まぎれもなく 후계자 なのです。

今日のクイズ

次のうち、후계자 を使うのがいちばん自然な場面はどれでしょう?

  1. 隣のチームの新入社員が挨拶に来たとき
  2. 三代続いてきた韓菓(ハングァ)工房を、孫娘が受け継いで営み始めたとき
  3. 今月の飲み会の幹事を、別の同僚に引き継ぐとき
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正解は 2番 です。三代にわたって続いてきた工房という「引き継ぐもの」がはっきりしていて、孫娘がその仕事を続けていくのですから、후계자 (hugyeja) がぴったり当てはまります。

1番は、ただの 후배 (hubae)、あるいは新入社員です。受け継ぐものがありません。3番のように軽い役割を引き継ぐときは 후임 (huim) と言うか、いっそ「다음 총무(次の幹事)」と言えば十分です。ここに 후계자 を使うと、飲み会の幹事の座を王座のように膨らませる冗談になってしまいます — もっとも、友達同士でわざと笑いを取るために、あえてそう使う韓国の人もいますが。


この記事の語釈と例文は、韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr) から引用しました。当該部分(翻訳を含む)は CC BY-SA 2.0 KR ライセンスのもとで利用・配布されます。