最新の記事

서브남주 신드롬 (seobeunamju sindeurom) — 結末を知っていながら、心が傾いてしまう場所

서브남주 신드롬

서브남주 신드롬 (seobeunamju sindeurom) とは、ドラマの中で女性主人公と最後まで結ばれることのない二番目の男性主人公のほうに、視聴者の心が傾いてしまう現象を指す言葉です。第1話ですでに結末が見えているのに、話数を重ねるごとに、主人公よりもその隣に立っている人のことばかりが気にかかってしまう——この言葉が指しているのは、そんな場所です。

韓国ドラマのファンなら、一度は経験があるはずです。男性主人公は最初こそ冷たくぶっきらぼうで、終盤になってようやく心を開きます。ところが 서브남주 (seobeunamju) は第1話から優しいのです。傘を持って立っていて、具合が悪ければお粥を作って持ってきて、ヒロインが他の人を好きだと知りながらも、そばに残り続けます。視聴者は「今よくしてくれる人」と「これから変わる人」とのあいだで、心が揺れます。そして、その揺れが最後まで実らないと分かっているからこそ、この言葉にはいつも薄い切なさが漂っています。

言葉の温度は軽やかです。「신드롬 (sindeurom)」という大げさな単語をくっつけたこと自体が、すでに冗談なのです。自分の感情を病気のように言うことで、そこから一歩距離を置く仕掛けになっています。だから真剣な告白のようには聞こえず、友達どうしで笑いながらやり取りできます。ただし底のほうには本物の心残りがあって、口にした本人が本当にそのキャラクターのせいで数日間気持ちが晴れない、ということもよくあります。表は冗談、中身は本気——この二重構造こそが、この表現の核心です。

辞書に載っている標準語ではありません。ドラマのファンダムで生まれ、コミュニティやSNSを経て、今では記事の見出しにまで登場するようになった新造語です。ですから公の場やあらたまった文章ではあまり使われず、代わりに感想・レビュー・雑談の場に息づいています。

実際の会話で見てみましょう

状況:日曜の夜11時。全16話のドラマの最終回が終わったばかりで、エンディングクレジットが流れているところ。ジュンギョンの家のリビングのソファにて。

エミリー: 아, 진짜… 나 이번에도 서브남주 신드롬 왔어. あぁ、ほんとに……わたし、今回もサブ男主シンドローム来ちゃった。

ジュンギョン: 또? 너 저번 드라마 때도 딱 그랬잖아. また? この前のドラマのときも、まさにそうだったじゃない。

エミリー: 아니 봐 봐, 저 사람 12회 내내 우산 들고 서 있었다고. いや、見てよ。あの人、12話ずっと傘を持って立ってたんだよ。

ジュンギョン: 그러니까 서브남주지. 이어질 사람은 우산 안 들고 그냥 뛰어와. だからサブ男主なんだって。結ばれるほうの人は、傘なんて持たずにただ走ってくるの。

エミリー: 야, 그 말이 더 아파. 나 오늘 잠 다 잤다. ちょっと、そっちのほうが刺さるんだけど。今夜はもう眠れないよ。

ジュンギョン: 서브남주 신드롬은 원래 최종회 다음 날이 제일 심해. 내일 출근길 조심해. サブ男主シンドロームって、もともと最終回の翌日がいちばんひどいの。明日の通勤、気をつけてね。

こう使うと不自然です

✗ (片思い中の友達に) 야, 너 지금 완전 서브남주 포지션인데? 서브남주 신드롬 오겠다. (ねえ、今の君って完全にサブ男主のポジションじゃない? サブ男主シンドローム来ちゃいそう。)

✓ (ドラマの話をしていて) 이번 드라마 서브남주 신드롬 장난 아니더라. (今回のドラマ、サブ男主シンドロームが半端じゃなかったよ。)

→ この言葉は、あくまでドラマの役柄について言う冗談です。実際に心を痛めている人に当てはめてしまうと、その人の感情を見世物にする言葉になってしまいます。笑わせるつもりの一言が、いちばん痛いところを突いてしまうのです。

✗ 서브남주가 결국 여주랑 이어졌어. 완전 서브남주 신드롬이야. (サブ男主が結局ヒロインと結ばれたよ。完全にサブ男主シンドロームだ。)

✓ 서브남주가 결국 여주랑 이어졌어. 이번엔 서브남주 신드롬 겪을 일이 없네. (サブ男主が結局ヒロインと結ばれたよ。今回はサブ男主シンドロームにかかることはなさそうだね。)

→ この言葉の重みは、「実らないと分かっていながら」という一点にかかっています。その人がヒロインと結ばれてしまえば切なさは消えますし、切なさがなければシンドロームも成り立ちません。初級の学習者がいちばんよく取りこぼすポイントです。

場面別の使い方

場面1 — 月曜のお昼休み、同僚が昨日の最終回の話を持ち出したとき

나 어제부터 서브남주 신드롬 심하게 왔어. (na eojebuteo seobeunamju sindeurom simhage wasseo.) 昨日からサブ男主シンドロームがひどく来てるんだ。

「왔다 (watda)」=「来た」という動詞とセットで使われるのが面白いところです。風邪のように、自分が呼んだのではなく、ひとりでにやって来たかのように語ります。前に 심하게 (simhage / ひどく)제대로 (jedaero / しっかり)또 (tto / また) といった言葉を添えて、強さを調節します。タメ口の場でいちばん自然な形です。

場面2 — まだそのドラマを見ていない人に、あらかじめ警告するとき

이 드라마 보실 거면 각오하세요. 서브남주 신드롬 옵니다. (i deurama bosil geomyeon gagohaseyo. seobeunamju sindeurom omnida.) このドラマを見るなら覚悟してください。サブ男主シンドローム、来ますよ。

敬語でもいくらでも使えます。新造語だからといってタメ口専用というわけではありません。ただし、あらたまった重みを担うのは文末の語尾のほうで、単語そのものは相変わらず軽いままです。ですから会社の上司とドラマの雑談をする程度なら問題ありませんが、報告書やプレゼンの原稿には使いません。

場面3 — SNSに感想を書き残すとき

16회까지 버텼는데 결국 서브남주 신드롬으로 끝났다. (sibyukhoekkaji beotyeonneunde gyeolguk seobeunamju sindeuromeuro kkeutnatda.) 16話まで持ちこたえたのに、結局サブ男主シンドロームで終わった。

-으로 끝났다 (-euro kkeutnatda) をつけると、「最後まで抵抗したけれど、結局は負けた」というニュアンスが生きてきます。この表現は、こんなふうに自分自身をからかう文でいちばん自然に輝きます。他人を判定するように使うよりも、自分の心がどちらへ行ってしまったかを告白する——それが本来の使いどころです。

敬語・タメ口と、似た表現

タメ口なら 서브남주 신드롬 왔어 (seobeunamju sindeurom wasseo)、敬語なら 서브남주 신드롬 왔어요 / 왔습니다 (wasseoyo / watseumnida) に変えるだけで済みます。単語そのものを変える必要はありません。ただ、あらたまり度が上がるほどこの単語自体が場に合わなくなるので、とても公的な文章では「두 번째 남자 주인공에게 감정이 이입되는 현상 (二番目の男性主人公に感情移入してしまう現象)」くらいに言い換えて書きます。

似た言葉と並べてみると、この表現の居場所がもっとはっきりします。

表現温度・強さ使う場面
서브남주 신드롬 (seobeunamju sindeurom)切なさの混じった高揚。冗談半分、本気半分ドラマの感想・レビュー・SNS。タメ口も敬語もOK
서브남주 (seobeunamju)中立。人を指す呼び名登場人物を指すときはいつでも
최애 (choeae)明るく堂々としている。心残りはなしファンダム全般。ドラマもアイドルも問わない
케미 (kemi)関係を評価する言葉。中立二人の人物がどれだけ噛み合っているかを言うとき

최애 (choeae) は「いちばん愛している対象」という意味なので、明るくて堂々とした言葉です。서브남주 신드롬には、その堂々とした感じがありません——勝てない戦いだと知っている心だからです。케미 (kemi) は二人のあいだの相性を見る言葉なので、感情の主体が視聴者ではなく画面の中の人物のほうにあります。韓国語には -앓이 (-ari) という生産的な接尾辞もあって、서브남주 앓이 (seobeunamju ari) のようにくっつけて使うこともありますが、こちらはもっと個人的で、期間も長くなります。シンドロームが「流行のようにみんなで一緒にかかるもの」だとすれば、앓이は「ひとりで長く患うもの」です。

文化背景 — 傘を持った人の場所

まずは言葉の組み立てから見てみましょう。서브 (seobeu) は英語の sub-、남주 (namju) は「남자 주인공(男性主人公)」の略語です。女性主人公も同じやり方で 여주 (yeoju) になります。そこに 신드롬 (sindeurom, syndrome) がくっつきました。韓国語の略語ひとつと外来語ふたつが肩を組んでできあがった単語なのです。英語圏のKドラマ・ファンダムでも second male lead syndrome という言い方が並んで使われていて、この表現は二つの言語を行き来しながら育ってきた、ということになります。

では、なぜよりによって韓国ドラマでこの現象がこれほど際立つのでしょうか。構造的な理由があります。韓国ドラマはたいてい全16話の枠の中で、ひとつの関係が変わっていく過程を描きます。男性主人公は最初、傲慢だったり不器用だったりしなければなりません。そうでないと、変わるための余地が残らないからです。一方、서브남주は変わる必要がないので、第1話からすでに完成形で登場します——優しくて、察しがよくて、待つことを知っている。序盤の8時間ほど、視聴者によくしてくれる人はサブ男主なのです。主人公が心を開くころには、視聴者はすでにもう一方に情が移っています。シンドロームは脚本家のミスというより、この構造が生む必然に近いものです。

《응답하라 1988 (eungdaphara 1988 / 応答せよ1988)》(tvN、2015〜2016) のように「誰が夫なのか」を最後まで伏せておくドラマは、この気持ちを真正面から利用しました。視聴者は毎週それぞれ根拠を集めては言い合い、最終回の直前まで気を揉んだのです。リアルタイム放送を見ながらコミュニティで同時に反応する韓国の視聴文化が、ここに油を注ぎました。ひとりで残念がるならただの心残りですが、同じ時刻に何万人もが一緒に残念がれば、それはシンドロームになります。

ファンはここからさらに一歩進んで、サブ男主が想いを畳んで去っていく場面を指して 성불했다 (seongbulhaetda / 成仏した) と冗談を言います。もともと仏教で「仏になる」という意味の言葉を、片思いの幕引きに持ってきたわけです。韓国語ファンダムの言葉づくりのやり方をよく示す例だと言えます——重い言葉を軽い場に連れてきて、痛む心を笑いながら語れるようにする。서브남주 신드롬も、結局は同じ系統の発明品なのです。

今日のクイズ

次のうち、서브남주 신드롬 をいちばん自然に使っている文はどれでしょう?

  1. 어제 최종회 봤는데, 서브남주가 여주랑 이어져서 서브남주 신드롬 제대로 왔어. (昨日最終回を見たんだけど、サブ男主がヒロインと結ばれたからサブ男主シンドロームがしっかり来た。)
  2. 나 이번 드라마 서브남주 신드롬 와서 최종회 못 보겠어. 결말 뻔한데 마음이 계속 그쪽으로 가. (わたし、今回のドラマでサブ男主シンドロームが来ちゃって最終回が見られない。結末は分かりきってるのに、心がずっとそっちに向かうの。)
  3. (昨日失恋した友達に) 너 지금 딱 서브남주 신드롬이다. (君は今、まさにサブ男主シンドロームだね。)

正解:2番。

1番は、サブ男主がヒロインと結ばれてしまったので、切なさが消えた状態です。シンドロームが成り立つ条件がありません。3番は、ドラマの役柄に使う冗談を、実際に傷ついている人に当てはめてしまった場合なので、慰めではなくからかいに聞こえます。2番は「結末を知っていながら、それでも心がそちらへ行ってしまう」という、この表現の核心を正確にとらえています。

この記事の語釈と例文は、韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr) から引用しました。当該部分(翻訳を含む)は CC BY-SA 2.0 KR ライセンスのもとで利用・配布されます。