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떡밥 — ドラマファンが毎週投げては食いつく言葉

떡밥

떡밥 (tteokbap) はもともと、米ぬかを練って作った釣り餌を指す言葉です。でもドラマやアイドルのファンダムでは、あとで明かされる何かを、前もってそっと投げておいた手がかりや予告という意味になります。金曜の夜、ドラマの15話が終わる直前に、カメラが引き出しの中の古びた手紙を3秒ほど映して通り過ぎます。セリフも説明もありません。放送が終わったとたん、コミュニティに書き込みが上がります。「あの手紙、떡밥 でしょ?」そこから翌週の最終話まで、一週間まるごと、みんながその3秒をつかんで語り続けるのです。

この言葉は、大きく二つの方向で使われます。一つは、作品が物語の中に仕込んでおいた手がかり。あとになって意味が明かされる小道具、セリフ、表情のようなものです。もう一つは、作品の外側から流れてくる知らせ。事務所が何の説明もなく上げた写真一枚、制作会社が公開した15秒の予告編も、ファンにとってはすべて 떡밥 です。

セットで使われる動詞も一緒に覚えておくと、ぐっと使い勝手がよくなります。떡밥을 던지다 (tteokbabeul deonjida) は手がかりを流す側の動き、떡밥을 물다 (tteokbabeul mulda) はそれにぱくっと食いついて推測を始める側の動きです。떡밥 회수 (tteokbap hoesu) は、投げておいた手がかりを物語がきちんと説明しきること。떡밥 가뭄 (tteokbap gamum) は、しばらく何の知らせもない、じれったい時期を指します。

温度は軽くて、うきうきしています。非難の言葉ではありません。むしろ「この作品、私をずっと気にさせてくるじゃない」という、楽しげなぼやきに近いのです。

国立国語院の辞典で確かめる

おもしろいのは、辞典にはこのファンダム用法がまだ載っていない、という点です。辞典が教えてくれるのは、この言葉の根っこのほうです。

떡밥 「명사」

  1. 쌀겨에 콩가루나 번데기 가루 등을 섞어 반죽하여 조그마하게 뭉쳐 만든 낚시 미끼. [en] paste bait — Bait made by adding bean flour or pupa powder to rice bran, kneading the mix, and dividing it into small lumps. [ja] ねりえ【練り餌】 — ぬかにきな粉やさなぎ粉などを練り混ぜて固めた釣り餌。 [es] tteokbap, cebo, carnada — Carnaza para pescar. Es como una masita pequeña y redonda, y está hecha con cáscaras de arroz, harina de soja o crisálidas trituradas. [zh] 面鱼饵 — 在米糠中掺入豆粉或蚕蛹粉末搅拌之后揉成小团,用作鱼饵。 ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)

떡밥 「명사」 2. 떡을 만들기 위하여 지은 밥. [en] tteokbap — Rice cooked to make tteok, rice cake. [ja] トッパ — トクを作るために炊いたご飯。 [es] tteokbap — Arroz cocido para preparar tteok o pastel de arroz. [zh] 做糕时提前蒸制备用的饭。 ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)

ポルトガル語訳は辞典に載っていないので、意味だけを移すと、1番は「isca de pesca feita de farelo de arroz」(米ぬかで作った釣り餌)、2番は「arroz cozido para fazer tteok」(トックを作るために炊いたご飯) となります。この二行は辞典の訳ではなく、こちらで付けたものであることをお断りしておきます。

辞典が見せてくれる実際の用例も見てみましょう。まずは1番の意味、釣り餌として使われている場合です。

아버지는 붕어 낚시를 할 때 떡밥으로 깻묵을 사용하신다. 이렇게 낚싯바늘을 감싸게 밀어 넣고 풀리지 않게 떡밥을 잘 눌러 줘야 돼. 떡밥을 던지다. 떡밥을 물다. ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)

一つ目の文は、ため池でフナを狙う人が、どんな材料で餌を作るのかを話している場面です。二つ目は、初めて釣りをする人に、針への餌の付け方を手で見せながら説明している言い方ですね。「ほどけないようにしっかり押さえないといけない」という言葉から、떡밥 が硬い粒ではなく、手で丸める練り物なのだということが、そのまま伝わってきます。

そして三つ目と四つ目に注目してください。던지다물다。今日学ぶファンダム用法の動詞が、すでに辞典の中に、それも釣りの話として入っているのです。スラングが単語だけを借りたのではなく、動詞をひとそろい丸ごと持っていった証拠と言えます。

次は2番の意味、トックを作るために炊いておいたご飯のほうです。

떡밥을 떡메로 쳤더니 커다란 떡이 되는 게 신기해요. ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)

炊きたてのご飯を木の杵で打って、インジョルミを作る場から出てきた言葉です。名節や村の行事で見られる光景で、ご飯粒がつぶれて一つの塊になっていく瞬間に驚く、子どもの口ぶりですね。同じ文字なのに、釣り場と餅つき台という、まったく違う二つの席に座っているわけです。

実際の会話で見る

場面:金曜の夜、ジュンギョンの家のリビング。ドラマの15話が終わり、来週の最終話の予告まで流れ終わったところ。

ジュンギョン: 야, 봤어? 마지막에 그 편지 클로즈업. 저거 완전 떡밥이야. ねえ、見た? 最後の手紙のクローズアップ。あれ完全に伏線だって。

エミリー: 아 그거? 나 3화에 나온 우산이랑 이어지는 것 같은데. ああ、あれ? 3話に出てきた傘とつながってる気がするんだけど。

ジュンギョン: 어우, 너 그걸 기억해? 소름. うわ、それ覚えてるの? 鳥肌。

エミリー: 근데 이 작가 떡밥 회수 잘 안 하잖아. 지난 작품도 절반은 그냥 버렸어. でもこの脚本家、回収するの下手じゃん。前の作品も半分はそのまま放り出したし。

ジュンギョン: 그러니까. 이번엔 던진 떡밥 좀 다 거둬 갔으면 좋겠다. ほんとそれ。今回は投げたぶん、全部拾っていってほしいな。

エミリー: 뭐, 어차피 우리는 또 물겠지. まあ、どうせ私たちはまた食いつくんだけどね。

こう使うと不自然です

✗(会議で部長に)부장님, 아까 하신 말씀 그거 떡밥이죠? ✓(同僚に)아까 부장님 말씀, 뭔가 있는 것 같지 않아? → ネットで育った言葉である上に、根っこに「餌」という意味が敷かれているので、目上の人の発言を釣り針あつかいすることになってしまいます。冗談としてもうまく通じません。

✗(実際の事故のニュースを見ながら)이번 사건 완전 떡밥이네. 다음 소식 언제 나와? ✓(実際の事故のニュースを見ながら)이건 좀 지켜봐야겠는데. → 被害者のいる出来事を、次回を待つ見世物にしてしまう言い方になります。文法は何ともなくても、聞いた人はひやりとします。この言葉はあくまで、作り話と芸能ニュースの席にあるものです。

場面別の応用例文

1. カムバックを控えたアイドルのファンのグループチャット — 事務所のアカウントに、説明のない写真が一枚上がった直後。

  • 소속사에서 새벽에 떡밥 뿌렸어. 티저 곧 나오나 봐. (sosoksaeseo saebyeoge tteokbap ppuryeosseo. tijeo got naonana bwa.)
  • 事務所が明け方に何か投げてきた。ティーザー、もうすぐ出るみたい。
  • 뿌리다 は、いくつかを一度に流すときに使います。던지다 より量が多くて、ぱっと散らばる感じですね。

2. 最終話を見た翌日、お昼を食べながら — 期待が大きかった分、失望も大きい状態。

  • 떡밥 회수 하나도 안 되고 끝났어. 그 지하실은 뭐였는데? (tteokbap hoesu hana-do an doego kkeutnasseo. geu jihasireun mwoyeonneunde?)
  • 伏線が一つも回収されないまま終わっちゃった。あの地下室は結局何だったの?
  • 회수 はもともと、投げたものを回収するという意味です。手がかりを仕込んでおきながら、説明しないまま終わってしまうと、この言葉が出てきます。

3. 二か月間まったく音沙汰のない俳優のファンコミュニティ

  • 요즘 완전 떡밥 가뭄이야. 사진 한 장이라도 좀 주지. (yojeum wanjeon tteokbap gamumiya. sajin han jangirado jom juji.)
  • 最近ほんとに何も出てこない。写真一枚でもくれたらいいのに。
  • 가뭄 は雨が降らない時期のことです。知らせを水のように考える表現なので、待つ時間が長くなるほど、よく登場します。

敬語・タメ口と似た表現

떡밥 は名詞なので、それ自体に敬意の上下はありません。ただ、この単語が入る文は、ほとんどがタメ口か、くだけた話し言葉です。「떡밥이 많네요」くらいならネットのレビューや同年代の会話で自然ですが、発表や報告書では、下の表にある別の言葉に置き換えるほうが安全です。

表現温度・強さ使う場所
떡밥 (tteokbap)軽くてうきうき、味方しながらのぼやきファンコミュニティ・同年代の会話。目上の人や公式文書には使わない
복선 (bokseon)中立的、分析する口ぶりレビュー・評論・授業。どこでも
스포 (seupo)否定的、気をつかう場面まだ見ていない人に結末を漏らすとき
낚시 (naksi)否定的、だまされたという感じ中身のないタイトルや、うその情報に

떡밥 と 복선 は、とくに混ざりやすいところです。복선 は作家が仕込んでおいた仕掛けを指す言葉で、떡밥 はそれを見つけた視聴者の側が食いついて騒ぐ言葉。だから 복선 は作品の中にしかありませんが、떡밥 は予告編や事務所の写真のように、作品の外側の知らせまで抱え込みます。낚시 とも違います。낚시 は結局なにもなかったときに使う裏切りの言葉で、떡밥 は何かあるはずだと信じて待つ、期待の言葉なのです。

文化背景 ── 餌を投げる側と、食いつく側

この言葉の絵はとても鮮明です。釣り人が練り餌を丸めて水に投げる。魚が食いつく。辞典の用例に並んでいた 던지다 と 물다 がそのまま生きていて、そこに、投げたものを回収する 회수、雨の降らない 가뭄 まで加わって、ひとそろいの語彙になりました。スラングがこんなふうに、もとの意味の風景を丸ごと連れてくる例は、そう多くありません。

こうした言葉が育った背景には、韓国ドラマの放送のしかたがあります。多くは週に二本ずつ、二、三か月かけて放送されます。一本が終わって次の一本まで、三日から一週間ほど空くのですが、その空いた時間に人々が集まって推測を交わすわけです。15話が残した3秒の場面ひとつが、何日かのあいだに何百もの書き込みになる。『シグナル』(tvN、2016) や『トッケビ』(tvN、2016〜2017) のように、前半に仕込まれた小道具やセリフが後半でぴたりと噛み合った作品は、今でも 떡밥 회수 の上手な例として名前が挙がります。

アイドルのファンダムでは、周期がもっと短くなります。カムバックが近づくと、事務所が数日かけて写真、短い映像、日付だけが書かれた画像を順番に公開していきます。この計画された小出し全体が 떡밥 で、ファンは写真の中の服の色や背景ひとつまでつかまえて語り合います。投げる側も食いつく側も、それが餌だと分かったうえで喜んで食いつく——その点が、この言葉が悪い意味で固まらなかった理由でしょう。

今日のクイズ

12話にわたって正体を隠してきた人物が、最終話でついに明かされました。それまでかすめるように通り過ぎていた写真、手紙、止まったままの時計が、この一場面ですべて説明されます。このとき視聴者が言う言葉として、いちばんふさわしいのはどれでしょう?

① 떡밥 가뭄이네. ② 떡밥 회수됐다. ③ 이제 막 떡밥 던졌네.

正解は②です。회수 は投げておいたものを回収するという意味なので、前に撒いた手がかりを残らず説明しきった、という言い方になります。①は知らせが途絶えてじれったい時期に、③は逆に、新しい手がかりが今まさに出てきたときに使います。

この記事の語釈と例文は、韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr) から引用しました。当該部分(翻訳を含む)は CC BY-SA 2.0 KR ライセンスのもとで利用・配布されます。