존함 — 人の名前を高めて呼ぶ言葉、どこまで上げていいのでしょうか
존함
존함 (jonham) は、他人の名前を高めていう言葉です。意味だけ見れば「이름(名前)」と変わらないのに、その名前の持ち主を高めるために、単語そのものをまるごと取り替えてしまったわけです。結婚式場の受付、病院の院長室の前、講演会の舞台、初めてお会いする目上の方のリビング — 名前を尋ね、名前を答えるほんの短い瞬間に、韓国語はわざわざ単語をひとつ差し替えます。
韓国語がかなりできる学習者でも、この言葉の前では一度立ち止まります。「이름이 뭐예요? (ireumi mwoyeyo?)」は教科書の最初のページで習いましたし、「성함이 어떻게 되세요? (seonghami eotteoke doeseyo?)」までなら病院の受付で何度も耳にしたことがあるでしょう。ところがある日、誰かに「존함이 어떻게 되십니까?」と尋ねられると、同じ質問のはずなのに、空気がひと目盛り張りつめたのが分かります。その張りつめの正体が、今日のテーマです。
まずは温度感を押さえておきましょう。名前を指す韓国語は、だいたい三つの層に分かれます。いちばん下が 이름 (ireum) — 中立で、どこでも使えます。その上に 성함 (seongham) — 丁寧ですが日常的な言葉です。銀行の窓口、宅配のドライバーさん、電話のオペレーターが一日に何十回も使います。そしていちばん上に 존함 (jonham) — 格式がもっとも高く、その分めったに使われません。성함が「業務用の敬語」だとすれば、존함は「礼遇」に近い言葉です。
ですから존함には二つの使い道があります。ひとつは相手の名前を尋ねる場面。初めてお会いする目上の方、来賓、あらたまった席で「존함이 어떻게 되십니까?」と伺います。もうひとつは — じつはこちらのほうが多いのですが — 話題にのぼった第三者の名前を指す場面です。「교수님 존함은 익히 알고 있습니다」「그분 존함만 대면 다 안다」のように、すでに知っている名前を高めて呼ぶときですね。この二つ目の用法を知っておくと、존함がなぜ称賛や礼遇の匂いを漂わせるのかが腑に落ちます。名前を知っているという事実そのものが、その人への敬意の表明になるからです。
いちばん大事な制約はひとつだけ。존함は決して自分自身には使いません。 존(尊)が「高める」という意味ですから、自分の名前に付ければ自分で自分を持ち上げることになってしまいます。これは文法の誤りではなく態度の誤りなので、ネイティブの耳にはずっと大きく引っかかります。
国立国語院の辞書で確認する
존함「名詞」 (高めていう語として)他人の名前。 ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)
外国語の語釈も一緒に載っています。
[en] name — (honorific) The name of another person. [ja] そんめい【尊名】。ほうめい【芳名】。おなまえ【お名前】 — 他人の名前を敬っていう語。 [es] nombre — (EXPRESIÓN DE RESPETO) Nombre de la otra persona. [zh] 尊姓大名,尊名 — (敬语)别人的名字。 ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)
四つの言語が口をそろえて同じことを言っています。英語は括弧の中に (honorific)、スペイン語は (EXPRESIÓN DE RESPETO)、中国語は (敬语) を先に置いています。つまり、意味よりも格式の表示が先だということです。日本語の対訳に尊名と芳名が並ぶのも興味深いところ。日本語の芳名もまた、芳名帳や記念館のようなあらたまった場に生き残った言葉なので、존함とは生息地がほとんど重なっています。ちなみに、この辞書にはポルトガル語の語釈が載っていません。あえて訳すなら「nome — (forma de tratamento respeitosa) o nome de outra pessoa」といったところですが、この一行は辞書のものではなく、私たちが付けた訳です。
辞書に載っている実際の用例はこちらです。
존함을 익히 알다. 존함을 여쭈다. 선생님, 존함이 어떻게 되십니까? 전부터 교수님의 존함은 익히 알고 있었습니다. 김 사장님은 존함만 대면 누구라고 알 수 있을 만큼 크게 성공한 기업인이십니다. ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)
一行ずつ読み解いていくと、존함が住んでいる場所がはっきり見えてきます。
- 존함을 익히 알다 — 「익히」と組になっています。ずいぶん前から、いろいろな経路で耳にして知っている、という意味です。존함はとりわけこの副詞をよく連れて歩きます。
- 존함을 여쭈다 — 「묻다」ではなく「여쭈다」です。動詞まで一緒に高くなります。존함の入った文で述語だけタメ口だと、文全体がぎくしゃくしてしまいます。
- 선생님, 존함이 어떻게 되십니까? — 名前を尋ねるもっとも丁寧な形。「무엇입니까」ではなく「어떻게 되십니까」である点が肝心です。韓国語では人に関する情報を尋ねるとき、直接ねらわずに「되다」で遠回りするのですね。
- 전부터 교수님의 존함은 익히 알고 있었습니다 — 初対面のあいさつの定番形です。この一文だけで「私はあなたを存じ上げていましたし、それを光栄に思っています」までが伝わります。
- 김 사장님은 존함만 대면 누구라고 알 수 있을 만큼… — 「존함을 대다」は名前を明かすという意味の慣用的な結びつきです。ここでの존함は、ほとんど名声と同じ重さで使われています。
実際の会話で見る
場面:土曜日の午後、結婚式場2階の受付の前。ご祝儀袋を手に、芳名帳の順番を待っているところです。
ジュンギョン: 봉투 여기 내고, 저 방명록에 이름 쓰면 돼. ご祝儀袋はここに出して、あそこの芳名帳に名前を書けばいいよ。
エミリー: 아까 접수하시는 분이 나한테 “존함이 어떻게 되세요?” 그랬거든. 나 순간 멍때렸잖아. さっき受付の方に「존함이 어떻게 되세요?」って聞かれて、一瞬フリーズしちゃった。
ジュンギョン: 아, 성함보다 한 칸 더 높인 말이야. 그냥 이름 뭐냐는 뜻. ああ、성함よりひと目盛り高くした言い方だよ。要するに「お名前は?」ってこと。
エミリー: 어쩐지. 난 무슨 서류 이름인 줄 알고 두리번거렸네. どうりで。何かの書類の名前かと思って、きょろきょろしちゃった。
ジュンギョン: 하하. 근데 너 신랑 아버님은 뵀어? 저기 검은 양복 입고 계신 분. はは。ところで新郎のお父さんにはもう会った? あそこの黒いスーツの方。
エミリー: 아직. 야, 그럼 아버님 존함도 미리 알려 줘. 인사드릴 때 어버버하기 싫어. まだ。ねえ、じゃあお父さんの존함も先に教えて。あいさつのときにしどろもどろになりたくないの。
こう使うと不自然です
✗(自己紹介で)안녕하세요, 제 존함은 김에밀리입니다. ✓(自己紹介で)안녕하세요, 저는 김에밀리라고 합니다. → 존함は相手を高める言葉なので、自分の名前には絶対に付けられません。自分で自分を持ち上げることになり、謙遜が重んじられる場では、間違いというより失礼に響きます。自分の名前は「이름」か「~라고 합니다」で低めて言いましょう。
✗(同い年の友達に)야, 너 존함이 어떻게 되냐? ✓(同い年の友達に)야, 너 이름이 뭐야? → 文法自体は問題ないのに、敬語の層が相手と合っていません。同年代に使うと、真面目な敬意ではなく、ふざけや皮肉として受け取られます。実際、韓国の人も友達をからかうときにわざとこう言います。その冗談を狙ったのでなければ、避けたほうが無難です。
場面別の活用例文
① 取引先の担当者に初めて電話をつないでもらったとき。 相手が誰なのか分からないまま通話が始まり、名前を伺わなければならないけれど、事務的すぎる言い方はしたくない。
- 실례지만 존함이 어떻게 되실까요? (sillyejiman jonhami eotteoke doesilkkayo?)
- 失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか。
- 「어떻게 되실까요」の「-ㄹ까요」が、断定をもう一枚やわらげてくれます。最初の電話でいちばん安全な形です。
② 長らくメールだけでやり取りしていた方に、ようやく直接お会いしたとき。 握手をしながらかける第一声。
- 말씀 많이 들었습니다. 존함은 진작부터 익히 알고 있었어요. (malsseum mani deureotseumnida. jonhameun jinjakbuteo iki algo isseosseoyo.)
- お噂はかねがね伺っております。お名前はずっと前から存じ上げていました。
- 辞書の例文にあった「익히 알다」をそのまま生かした一文です。名前を知っているという事実を礼遇に変換する、韓国式のあいさつの定石といえます。
③ 展示場や記念館の入口で案内係を務めているとき。 来場者に芳名帳への記帳をお願いする場面。
- 여기 방명록에 존함 남겨 주시면 됩니다. (yeogi bangmyeongnoge jonham namgyeo jusimyeon doemnida.)
- こちらの芳名帳にお名前をお残しいただければ結構です。
- 존함がいまもいちばん自然に生きている場所は、芳名帳・弔問記帳・署名台です。話し言葉よりも書き言葉に先に付く語だという性格が、ここによく表れています。
敬語・タメ口の似た表現
| 表現 | 温度・強さ | 使う場面 |
|---|---|---|
| 존함 (jonham) | もっとも格式が高い。礼遇のニュアンス | 初めてお会いする目上の方、来賓の紹介、芳名帳の案内。毎日使う言葉ではありません |
| 성함 (seongham) | 丁寧だけれど日常的 | 病院・銀行・店舗の受付、電話応対。敬語が必要なときの、いちばん無難な既定値 |
| 함자 (hamja) | 格式は最上級 + 用途が特殊 | 目上の方の名前を一文字ずつ伺うとき。「아버님 함자가 어떻게 되십니까?」 |
| 성명 (seongmyeong) | 中立・事務的 | 書類やフォームの記入欄の名前。人に直接尋ねると硬く、取り調べのような感じ |
| 이름 (ireum) | 中立 | 同年代、目下の相手、そして自分自身。タメ口の場面の基本形 |
タメ口のほうは、選択肢がないに等しいのです。존함に対応するタメ口は存在せず、そのまま 이름 に降りてきます。「너 이름이 뭐야?」でおしまい。敬語は何層にも積み上がっているのに、タメ口はひと目盛りしかない。この非対称は、韓国語の敬語法のかたちをよく表しています。階段が必要だったのは、見上げるときだけだったのですね。
混同しやすいのは존함と함자の組み合わせです。존함は名前全体をひとまとまりで指し、함자はその名前を構成する一文字一文字を指します。ですから함자を伺えば、答えも文字単位で返ってきます。「김 자, 영 자, 수 자입니다」のように、一文字ごとに「자(字)」を付けてはっきり区切って言うのですが、これは「目上の方の名前を一気に発音してしまわない」という礼法が、文のかたちとして固まったものです。
文化背景 — 名前を呼ばない国
존함の「함」は漢字の 銜 です。この字は 명함 (名銜)、직함 (職銜)、성함 (姓銜)、함자 (銜字) のすべてに入っています。初対面の人に差し出す一枚の紙をなぜ「명함」と呼ぶのか、부장・팀장といった呼称をなぜ「직함」と呼ぶのか — その答えが、この一字でつながります。名前と地位をひとまとめに扱う感覚が、単語の中に化石のようにそのまま残っているわけです。
ただ、존함が必要になった本当の理由は別のところにあります。韓国では目上の人の名前を声に出して呼びません。父親を名前で呼ぶ大人はいませんし、会社でも名前の代わりに役職で呼びます。부장님、선생님、원장님。ですから、どうしても名前を確認しなければならない瞬間が来ると — 書類を書くとき、誰かを紹介するとき、封筒に書かなければならないとき — 尋ねる側のほうが申し訳なくなってしまうのです。その申し訳なさをやわらげるために、単語をひとつ上の段に持ち上げて差し出す。それが존함であり함자です。敬語が礼儀というより緩衝材として働いている、代表的な例といえます。
ドラマで존함に出会う場面も、だいたい同じです。時代劇なら身元の分からない相手に名を請う場面、現代劇なら病院長や会長が初登場して紹介される場面、法廷ものなら証人席に立った人物の身元を確認する場面。共通点はひとつ。二人のあいだにまだ関係がなく、その空白を礼遇で埋めなければならない、ということです。逆に、すでに親しくなった人物どうしでは、この言葉がぱたりと途絶えます。존함が消える瞬間こそ、二人が近づいた瞬間。セリフを追うだけで、関係の距離の変化が見えてくるのです。
今日のクイズ
韓国の会社に入社した初日、チーム長とあいさつを交わすことになりました。チーム長の名前はすでに知っていて、そのことを丁寧に伝えたいと思っています。次のうち、もっとも自然な言い方はどれでしょう?
- 팀장님, 제 존함은 에밀리입니다.
- 팀장님 존함은 전부터 익히 알고 있었습니다.
- 팀장님, 존함이 뭐예요?
- 팀장님 성명이 어떻게 되냐?
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正解:2番
1番は존함を自分の名前に付けてしまい、自分で自分を高めています。2番は辞書の例文にあった「익히 알다」をそのまま生かした標準形です。3番は単語だけ高めて述語は低いままなので、層がずれています — 「존함이 어떻게 되십니까」でこそ釣り合います。4番は書類用語の「성명」にタメ口の語尾まで付いていて、二重にずれています。
この記事の語釈と例文は、韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr) から引用しました。当該部分(翻訳を含む)は CC BY-SA 2.0 KR ライセンスのもとで利用・配布されます。