最新の記事

남산타워 (Namsan Tawo) — ソウルで一か所だけ行くとしたら。韓国の人はなぜこの名前を短く縮めるのでしょう

남산타워

남산타워 (Namsan Tawo) は、「ソウルのど真ん中、南山(ナムサン)のてっぺんに立つ展望タワー」という意味です。ソウルに初めて来た友だちに「一か所だけ行くならどこ?」と聞かれたら、十中八九まっ先に出てくるのがこの名前です。地図アプリには別の名前で載っていて、案内標識にも別の名前が付いているのに、韓国の人の口から出てくるのはいつも 남산타워 (Namsan Tawo) なのです。

言葉をほどいてみると単純です。남산 (Namsan) はソウルの中区と龍山区のあいだに座る低い山の名前で、타워 (tawo) は英語の tower をそのまま写した外来語です。つまり「南山にあるタワー」。名前に山がまるごと入っている、というのが大事なところです。韓国の人にとって남산타워は都心の高いビルではなく、올라가는 곳 (ollaganeun got)、つまり「登っていく場所」なのです。だから実際の会話では「남산타워에 있어(南山タワーにいる)」よりも、「남산타워에 올라갔어(南山タワーに登った)」「남산타워 올라가자(南山タワーに登ろう)」のほうが圧倒的によく使われます。動詞の付く位置が違うと知っておくだけで、文が一気に自然になります。

ニュアンスもひとつあります。この言葉には、ちょっと浮き立つような感じが混ざっています。会社名や駅名のように淡々と発音される単語ではなく、デート・お出かけ・久しぶりのお客さんといった場面とセットで動く単語です。「남산타워 갈래?(南山タワー行く?)」は「ちょっと一緒に時間を過ごそうよ」に近い誘いですし、「남산타워에서 야경 봤어(南山タワーで夜景を見た)」は、その日が特別だったというサインです。

実際の会話で見てみましょう

場面:土曜日の午後、南山へ登る道の入り口。バス停の前で、ジュンギョンがなかなか足を動かしません。

ジュンギョン: 야, 그냥 버스 타자. 여기서 남산타워까지 걸어가면 진짜 한 시간이야. ねえ、もうバスに乗ろうよ。ここから南山タワーまで歩いたら、ほんとに一時間かかるって。

エミリー: 한 시간은 무슨. 나 저번에 사십 분 만에 올라갔거든? 一時間なわけないでしょ。私、この前は四十分で登ったんだけど。

ジュンギョン: …진짜? 나 서울에서 삼십몇 년 살면서 남산타워 걸어서 올라간 적 한 번도 없는데. ……マジで? 俺、ソウルに三十何年住んでるけど、南山タワーまで歩いて登ったこと、一度もないんだけど。

エミリー: 그러니까 서울 사람들이 더 몰라. 계단 길로 가면 중간에 성곽 나와, 완전 예뻐. だからソウルの人のほうが知らないのよ。階段の道で行くと、途中に城郭が出てくるの。ほんとにきれい。

ジュンギョン: 알았어, 대신 내려올 땐 케이블카다. 콜? わかった。その代わり、下りはケーブルカーね。それでいい?

エミリー: 콜. 대신 야경까지 보고 내려오는 거야. オッケー。その代わり、夜景まで見てから下りるからね。

こう使うと不自然です

남산타워は場所の名前なので、相手を選ぶ言葉ではありません。ただ、学習者がよくつまずくポイントが二つあります。

✗ (ソウルに住んでいる友だちに)우리 이번 주말에 남산타워 관광 갈까?(今週末、南山タワーに観光しに行く?) ✓ (ソウルに住んでいる友だちに)우리 이번 주말에 남산 갈까?(今週末、南山行く?) → 文法はどこも壊れていないのに、口ぶりが観光客です。自分の住んでいる街を指して「관광(観光)」を付けると、よその町の話のように聞こえてしまいます。そのうえソウルの人同士は、行き先を言うときにタワーの名前まで付けず、山の名前だけを短く放り投げます。

남산타워가 서울에서 제일 높은 건물이죠?(南山タワーがソウルでいちばん高い建物ですよね?) ✓ 남산타워가 서울에서 제일 높은 데 있는 전망대죠?(南山タワーが、ソウルでいちばん高いところにある展望台ですよね?) → よくある誤解です。建物の高さだけで比べるなら、蚕室(チャムシル)のロッテワールドタワーのほうが남산타워よりずっと高いです。남산타워がソウルのどこからでも見えるのは、タワーが大きいからではなく、山の上に立っているからです。この違いをわかったうえで話すと、「お、けっこう知ってるじゃん」と言われます。

場面別の使い方

1. 久しぶりに会う外国の友だちに、コースを組んであげるとき

첫날은 시차도 있으니까 남산타워 (Namsan Tawo) 만 올라갔다 오자. 해 지기 한 시간 전에 올라가면 낮 풍경이랑 야경을 한 번에 볼 수 있어.

(初日は時差もあるから、南山タワーだけ登ってこよう。日が沈む一時間前に登れば、昼の景色と夜景を一度に見られるよ。)

ソウルの予定を組んであげるとき、いちばんよく出てくる文です。日が暮れる前に登って、暗くなるまで粘る——これは地元の人ならみんな知っているコツです。「올라갔다 오다(登って戻ってくる)」という往復の表現をまるごと覚えておくと、山でも展望台でも屋上でも、どこにでも使えます。

2. 週末の予定をたずねる、軽い会話

A: 주말에 뭐 했어? B: 별거 안 했어. 그냥 남산 (Namsan) 좀 걷다 왔어.

(A:週末、何してた? / B:たいしたことしてないよ。ちょっと南山を歩いてきただけ。)

ここでのBは、南山タワーに登ったのかもしれませんし、山のふもとの道をぐるっと歩いてきただけかもしれません。韓国語では、こうしてわざわざ区別せず、ざっくりまとめて言うほうが自然です。細かく言うと、かえって説明くさく聞こえてしまいます。

3. 写真を見せながら

이거 작년 겨울에 남산타워 (Namsan Tawo) 에서 찍은 건데, 그날 미세먼지가 없어서 인천까지 보였어.

(これ、去年の冬に南山タワーで撮ったんだけど、その日はPM2.5がなくて仁川まで見えたんだよ。)

「~에서 찍다(~で撮る)」は、写真の話をするときの基本の骨組みです。天気や視界の話を付け足すと、文がぐっと生きてきます。実際、ソウルの人は眺めの話をするとき、天気よりも視界、なかでもまず「미세먼지(PM2.5)」の話をします。

敬語・タメ口と、似た言い方

このタワーを指す言い方は、ひとつではありません。どれを選ぶかで、話し手の立ち位置が見えてきます。

表現温度・強さ使う場面
남산타워 (Namsan Tawo)いちばん広く使われる通称。気楽日常会話ならどこでも。通じない場所がありません
N서울타워 (N Seoul Tawo)公式・中立。少し硬い地図アプリ・案内標識・入場券・ニュース記事
남산 (Namsan)いちばん短く、地元の人らしい友だち同士で行き先を言うとき
서울타워 (Seoul Tawo)昔の呼び名。少し古風年配の世代や、昔の記事で

語尾は相手によって分かれます。友だちには「남산타워 갈래?」、目上の人や初対面の人には「남산타워 한번 가 보시겠어요?」または「남산타워 가 보셨어요?」が安全です。場所の名前そのものは敬語と関係がないので、変えるべきなのは名前ではなく、うしろに付く動詞の語尾だけです。

文化背景 — 南の山の上の送信塔

「남산」は、文字どおり「南の山」です。朝鮮が漢陽(ハニャン)に都を定めたとき、都城の南にあった山なのでそう呼ばれるようになりました。それ以前は木覓山(モンミョクサン)という名前のほうがよく使われていたそうです。つまり남산타워という名前は、「南の山の上のタワー」という、ずいぶん素っ気ない組み立てなわけです。ちなみに「南の山」という意味なので、全国に남산はいくつもあります。慶州にも남산がありますし、地方の小さな町ごとに남산がひとつずつある、というのもよくあることです。ただ、何の説明もなく「남산」とだけ言えば、ソウルの人のあいだではこの山を指します。

このタワーは、もともと観光地として建てられたものではなく、放送電波を飛ばす送信塔でした。1960年代の終わりに着工して1970年代の半ばに完成し、一般に開放されたのは1980年です。2000年代の半ばに大がかりな手直しをした際、今の正式名称を得ましたが、人々の口に馴染んだ昔の通称は、とうとう押しのけられませんでした。看板を変えても、呼んできた名前は変わらない——韓国語で通称がどれほどしぶといかを示す、代表的な例です。

登る道は、大きく三つ。ケーブルカー、循環バス、そして階段です。ケーブルカーは1960年代の初めに敷かれた古い路線なので、それ自体が見どころですし、階段の道は昔の漢陽都城の城郭に沿って登るため、歩く味わいがまるで違います。展望台の下の手すりには南京錠がびっしり掛かっていて、恋人たちが名前を書いて掛け、鍵を捨てる場所として知られています。最近は恋人でなくても、友だち同士や家族同士でひとつずつ掛けていきます。

ドラマとの縁も深い場所です。2000年代半ばのある人気ロマンティックコメディで、主人公の二人が南山の階段を一緒に上り下りする場面が話題になって以来、この階段はしばらく「ドラマに出てきたあの階段」と呼ばれていました。その後もソウルを舞台にした作品で、主人公が気持ちを整理したり、告白したりする場所として繰り返し登場します。韓国ドラマを見ていて、夜に赤く光るタワーが画面の隅に映ったら、それは「ここはソウル、そして今は夜だ」という視覚的な合図だと思って、まず間違いありません。

今日のクイズ

ソウルに住んでいる友だちが、こう聞いてきました。

「주말에 남산 갈래?」

この友だちは、どこに行こうと言っているのでしょうか。

① 남산という名前のカフェ ② 남산타워が立っている、まさにその山 ③ 남산という町の在来市場

正解:②

ソウルで何の説明もなく「남산」とだけ言えば、남산타워が立っているあの山のことです。そしてこの言葉には、たいてい「올라가자(登ろう)」が省略されています。タワーに必ずしも入らなくても、散歩して夜景を見て下りてくるところまで、ぜんぶ「남산 간다」に含まれます。今度、韓国の友だちにこう聞かれたら、「좋아, 케이블카 타고 갈까 걸어서 갈까?(いいね、ケーブルカーで行く? それとも歩いて行く?)」と聞き返してみましょう。その瞬間、あなたは観光客ではなく、ソウルの人の口ぶりを使っているのです。

この記事の語釈と例文は、韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr) から引用しました。当該部分(翻訳を含む)は CC BY-SA 2.0 KR ライセンスのもとで利用・配布されます。