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삐지다 (ppijida):怒ったとは言わないけど、全身でそれを物語っちゃうあの気持ち

韓国ドラマを見ていると、必ずこんな場面が出てきます。さっきまで楽しそうに笑っていた人が、ちょっとした一言で急に口をきゅっと閉ざし、返事は短くなり、体をぷいっと背けてしまう。大声でけんかしているわけでもないのに、空気がひんやりしますよね。「怒ってる?」と聞くと「別に」と答えるけれど、表情も声も、もうすっかり怒っていると物語っています。まさにこの微妙な状態を、韓国語ではたった一言で表せるんです。今日の表現、삐지다 (ppijida) です。

삐지다

삐지다 (ppijida) は、腹が立ったり寂しく思ったりして、ちょっとひねくれてすねることを意味します。大事なニュアンスがあるんです。삐지다は大きく爆発する怒りではなく、心の中で寂しさがたまって、それが外にじわっと漏れ出す、ひねくれた感情なんですね。あからさまに「私は怒ってるの!」と叫ぶ代わりに、口数が減って、目を合わせなくなって、しょんぼりする。だから삐지다は、親しい間柄、愛情のある間柄でよく使われます。何の関係もない相手にはすねたりしませんからね。相手が自分に関心を持っていて、寂しさを感じるほど近い、という証でもあるんです。

国立国語院の辞典で確認する

国立国語院『韓国語基礎辞典』は、삐지다をこう説明しています。

삐지다 (動詞):腹が立ったり寂しく思ったりして心がねじれること。 [英語] become sullen; sulk — For one’s mind to be twisted because one feels angry or hurt. [スペイン語] ponerse malhumorado [中国語] 发火,发脾气 — 生气或遗憾而心里别扭。 ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)

辞典が載せている実際の使用例文も一緒に見てみましょう。

  • 친구가 삐지다. (chinguga ppijida)
  • 여자 친구가 삐지다. (yeoja chinguga ppijida)
  • 아이가 삐지다. (aiga ppijida)
  • 아내가 삐지다. (anaega ppijida) ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)

例文の主語を見てください。친구 (chingu, 友だち)、여자 친구 (yeoja chingu, 彼女)、아이 (ai, 子ども)、아내 (anae, 妻) ── どれも自分に近い人ばかりです。さきほど述べた「愛情のある間柄で使う」というニュアンスが、辞典の例文にもそのまま表れていますね。「친구가 삐지다」は約束をうっかり忘れたあとに友だちがしょんぼりしている場面、「아이가 삐지다」は買ってあげると言ったおもちゃを買ってもらえず、子どもが口をとがらせている場面を思い浮かべればいいでしょう。

ちなみに、この単語のポルトガル語訳は辞典に載っていないので、意味を生かして訳すと ficar de mal (すねて、ふてくされた状態) くらいになります。(辞典に載っているものではなく、独自の訳です。)

場面別の応用例文

自作の例文を三つ使って、実際の会話の感覚をつかんでみましょう。

場面1 ── 誕生日をうっかり忘れた友だちに

너 혹시 삐졌어? (neo hoksi ppijyeosseo?) ── もしかして、すねてる?

友だちの表情がおかしいとき、そっと確かめる言い方です。

場面2 ── 違うと言い張るけど、もうすねている自分

나 안 삐졌거든. (na an ppijyeotgeodeun.) ── 私、すねてないってば、ほんとに。

口では違うと言っているのに、実はすねている。いちばん韓国らしい場面ですね。

場面3 ── すねている相手をなだめるとき

삐지지 마, 내가 잘못했어. (ppijiji ma, naega jalmothaesseo.) ── すねないで、私が悪かったよ。

敬語・タメ口と、似た表現の比較

삐지다は、たいてい親しくて気楽な間柄のタメ口の場面で自然に使われます。タメ口なら「삐졌어? (ppijyeosseo?)」、もう少し丁寧にすれば「삐지셨어요? (ppijisyeosseoyo?)」と言えますが、職場の上司のように格式が必要な間柄ではあまり使いません。

似た表現も知っておきましょう。토라지다 (torajida) は삐지다とほぼ同じ意味で、置き換えて使えます。서운하다 (seounhada) はすねる一歩手前の感情、つまり「寂しい・物足りない」に近く、화나다 (hwanada) は삐지다よりずっと大きく直接的な怒りです。それから、標準語の話をひとつ ── もともと標準語は 삐치다 (ppichida) だったのですが、2014年に 삐지다 も標準語として認められ、今はどちらも正しい言葉です。

文化的な背景

韓国の感情表現には、「はっきり言わなくても察してほしい」という情緒が根っこにあります。삐지다は、まさにその代表選手なんです。寂しい気持ちを直接問い詰めるより、沈黙と表情でサインを送り、相手が気づいて先に歩み寄り、なだめてくれるのを待つ。ドラマの中の恋人たちが些細なことですねて、相手がおやつや愛嬌で仲直りする場面が繰り返されるのは、そのためですね。だから삐지다を理解すると、韓国の人たちの愛情表現の仕方が、ぐっと見えやすくなります。

今日のクイズ

友だちがあなたのメッセージに返事をせず、会っても素っ気ない態度をとります。怒りが爆発したわけではなく、寂しくてすねている感じです。こんなとき、ぴったりな一言は?

① 너 화났어?   ② 너 삐졌어?   ③ 너 슬퍼?

(正解:②。大きく怒っているわけでも、悲しいわけでもない「寂しくてすねている」状態には、삐졌어? (ppijyeosseo?) がいちばん自然です。)


この記事の語釈と例文は、韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr) から引用しました。当該部分(翻訳を含む)は CC BY-SA 2.0 KR ライセンスのもとで利用・配布されます。