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식혜 (sikhye) — チムジルバンの冷蔵庫の前で覚える韓国語

식혜 (sikhye) は、麦芽を浸した水でご飯を発酵させ、砂糖を加えて煮立たせたあと、冷やして飲む韓国の伝統的な甘い飲み物のことです。黄色い汁の上に白いご飯粒がぷかぷか浮いている、あの飲み物です。

韓国に来てチムジルバン (찜질방, jjimjilbang) に一度でも行ったことがある方なら、十中八九もう飲んでいるはずです。熱い部屋で汗をたっぷり流して出てきて、売店の冷蔵庫を開けると、焼き卵の隣に黄色い缶がずらりと並んでいます。それが식혜です。名前が分からなくて、指をさすだけだったという方が意外に多いのです。

식혜は物の名前なので、その言葉自体に敬語・タメ口の区別はありません。その代わり、この言葉が置かれる場面はかなりはっきりしています ── ご飯を食べ終わったあと(デザート)、汗を流したあと(チムジルバン)、そしてお客さんが来たとき(もてなし)です。ですから 식혜 한잔할래? (sikhye hanjanhallae?) はお酒を勧める言葉ではなく、「そろそろ座って休もうよ」に近い言葉です。熱いコーヒーではなく、冷たくて甘いもので締めくくろう、という合図なのです。

国立国語院の辞典で確かめる

식혜「名詞」 麦芽を浸した水にご飯を入れて発酵させ、ご飯粒が浮いてきたら砂糖を加えて煮立たせたあと、冷やして食べる、甘い韓国の伝統飲料。 ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)

同じ辞典に載っている外国語訳は次のとおりです。

[en] sikhye; sweet rice punch — A sweet-flavored traditional Korean beverage, made by fermenting cooked rice in barley malt water, adding sugar, and boiling it down, drunk after cooling. [ja] シケ。カムジュ【甘酒】 — 麦芽から抽出した水にご飯を入れて発酵させた後、飯粒が浮き上がったら砂糖を加えて煮詰めたものを冷やして飲む甘味のある韓国の伝統飲料。 [es] sikye, bebida dulce de arroz — Bebida típica coreana hecha con granos de arroz y malta para dar el sabor dulce. [zh] 甜米露 — 一种甜的韩国传统饮料,把麦芽放在水中泡开之后放入米饭酿熟,等到饭粒发酵之后再放入白糖煮沸,等冷却之后食用。 ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)

ポルトガル語の語釈は、この辞典には載っていません。以下は辞典からの引用ではなく、私たちが独自に訳したものです ── sikhye, bebida doce de arroz: bebida tradicional coreana de sabor doce, feita fermentando arroz cozido em água de malte de cevada e servida gelada.

辞典に載っている実際の用例も、いっしょに読んでみましょう。

내가 식혜를 국자로 휘젓자 가라앉았던 밥알이 동동 떴다. ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)

大きな器に入れておくと、ご飯粒は底に沈んでしまいます。おたまでひとかき混ぜてご飯粒を浮かせてから器によそう ── そうしてはじめて、きちんとした一杯になります。동동 (dongdong) は、小さくて軽いものが水の上に浮かんでいる様子を表す言葉です。

식혜를 추운 바깥에 놓아두었더니 안에 박빙이 생겼다. ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)

冬に庭やベランダへ出しておくと、表面に薄い氷が張ります。これが 박빙 (bakbing) です。シャリシャリした薄氷まじりの식혜こそ最高だ、という人はとても多いのです。

나는 밥을 먹고 후식으로 식혜를 마시면 소화가 잘되는 듯하다. ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)

식혜がいちばんよく登場する場面です。麦芽が消化を助けると考えられているので、脂っこい名節の料理を食べたあとには特によく求められます。

할머니께서는 전통 음료 중에서도 식혜와 수정과를 즐겨 드셨다. ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)

식혜と相棒のようにセットで出てくるのが 수정과 (sujeonggwa) です。どちらも名節の食卓に並ぶ伝統的なデザート飲料なので、ひとつの文の中に並んで登場することがよくあります。

저희 집에 가서 식혜 한잔 드시지요. ── 韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr)

お客さんを家へ招くときの言い方です。「お茶でも一杯いかがですか」が入るところに식혜が入った形で、なかなか格式のある誘い方になります。

実際の会話で見てみる

場面:土曜日の夕方のチムジルバン。汗をたっぷり流して出てきて、売店の前に立ったところ。

ジュンギョン: 아, 살 것 같다. 뭐 마실래? 내가 살게. ああ、生き返った。何飲む? おごるよ。

エミリー: 나 저기 노란 캔. 식혜. 私、あそこの黄色い缶。식혜。

ジュンギョン: 오, 좀 아는데? 외국인들은 보통 이온 음료 집던데. お、分かってるね。外国人はたいていスポーツドリンクを取るんだけど。

エミリー: 무슨 소리야, 나 한국 산 지 15년이야. 사우나 끝나고 식혜 안 마시면 섭섭하지. 何言ってるの、私、韓国に住んで15年だよ。サウナのあとに식혜を飲まないと、なんだか物足りないでしょ。

ジュンギョン: 근데 밥알은 어떡해? 다 마셔도 바닥에 남잖아. でもご飯粒はどうするの? 飲み干しても底に残るじゃん。

エミリー: 그건 뚜껑 열고 털어 먹는 거지. 그게 제일 맛있는데. あれはフタを開けて、振って食べるんだよ。あれが一番おいしいのに。

こう使うと不自然です

식혜は物の名前なので、相手によって使い分ける言葉ではありません。その代わり、学習者がよくつまずく勘違いを二つ挙げておきます。

✗ 저는 식혜를 못 먹어요. 비린내가 나서요. ✓ 저는 식해를 못 먹어요. 비린내가 나서요. → 식혜 (sikhye) は甘い飲み物、식해 (sikhae) は魚をご飯や粉唐辛子といっしょに漬け込んだ塩辛の一種です。一文字違うだけなのに、食卓に出てくる場所はまるで違います。

식혜 한잔하자고요? 저는 술을 못 마셔서요. ✓ 식혜 한잔하자고요? 좋아요, 저 그거 좋아해요. → 식혜にアルコールは入っていません。「한잔하다」がふつうお酒の誘いに使われるうえ、日本語訳が甘酒(あまざけ)なので、お酒だと勘違いしやすいのです。でも飲み物の名前が前に付いていれば、それは飲み会のお誘いではありません。

場面別の応用例文

1) 名節の夜、食卓を片づけたあと 大人はソファに横になり、子どもたちは走り回っている時間。おなかはいっぱいなのに、口がさびしい。 “배부른데 식혜 한 그릇만 더 먹을까? (baebureunde sikhye han georeut-man deo meogeulkka?)” ── 缶で飲むこともありますが、家で仕込んだ식혜は器によそって食べます。ですから「한 잔(一杯)」と「한 그릇(一杯=器ひとつ)」の両方が自然に使えます。

2) コンビニで探すとき “저기요, 식혜 있어요? (jeogiyo, sikhye isseoyo?)” “냉장고 맨 아래 칸에 있어요. (naengjanggo maen arae kane isseoyo.)” ── 缶入りの식혜は、たいてい飲料用冷蔵庫の下のほう、梨ジュースやアロエ飲料の隣にあります。夏には目につきやすい場所に上がってくることもあります。

3) お客さんをもてなすとき “식혜 좀 드릴까요? 어머니가 직접 담그신 거예요. (sikhye jom deurilkkayo? eomeoniga jikjeop damgeusin geoyeyo.)” ── 식혜は 담그다 (damgeuda) という動詞といっしょに使います。キムチを漬けるように、식혜も「담그다」なのです。買ってきたものではなく家で作ったという一言は、それだけで心づくしの印になります。この一文があるかないかで、もてなしの重みが変わってきます。

敬語・タメ口と似た表現

勧めるときの言い方は、相手によってこう分かれます。

  • タメ口: 식혜 한잔할래? (sikhye hanjanhallae?)
  • 敬語: 식혜 한잔 드시겠어요? (sikhye hanjan deusigesseoyo?)
  • もっと丁寧に: 식혜 좀 내어 드릴까요? (sikhye jom naeeo deurilkkayo?)

似た場面に置かれる飲み物と並べてみると、식혜の立ち位置がはっきりします。

表現味わい・強さ使われる場面
식혜 (sikhye)甘くて冷たい。ご飯粒が浮いているチムジルバン・名節のデザート・来客のもてなし
수정과 (sujeonggwa)シナモンと生姜の香りがぴりっと濃い名節の食卓・韓定食のデザート。子どもはあまり欲しがらない
감주・단술 (gamju·dansul)식혜とほぼ同じものを指す家庭や地域によってこう呼ぶ。年配の方の言葉の中に残っている
미숫가루 (misutgaru)香ばしくて、とろりと濃い夏の水分補給・おやつ。食後のデザートの座ではない

文化背景 ── 汗を流したあとの一杯

漢字では「食醯」と書きます。先ほど出てきた식해(食醢)とは最後の一文字が違うだけなのに、一方は甘い飲み物、もう一方は発酵させた魚になります。韓国の人でも、書くときにときどき迷う組み合わせです。

作り方を知ると、この名前がぐっと分かりやすくなります。麦芽を水に浸してその汁を取り、そこに炊いたご飯を入れて温かいところに置いておくと、ご飯粒が少しずつ発酵していきます。ご飯粒がひとつ、またひとつと浮かび上がってきたら出来上がりの合図。そこで砂糖を加え、ひと煮立ちさせて冷やします。辞典の用例にあった「밥알이 동동 떴다(ご飯粒がぷかぷか浮いた)」という表現は、ただの描写ではなく完成の合図だったわけです。時間がかかるので普段から仕込む家庭は少なく、たいていは名節や祝いごとのような、手間をかける日に大きな容器でまとめて作ります。そうして作った식혜を冬のベランダに出しておくと、薄氷が張るのです。

最近の若い世代にとって、식혜の居場所はチムジルバンです。頭にタオルを巻いて羊の角のような形にする 양머리 (yangmeori) をつくり、焼き卵をおでこにコツンと当てて割り、식혜を一缶飲む ── この三つは、ほとんどワンセットで語られます。韓国ドラマでも、登場人物がチムジルバンの床に座って卵をむきながら本音を打ち明ける場面が繰り返し出てきますが、その手に握られている黄色い缶は、たいてい식혜です。ですからこの単語を覚えることは、飲み物をひとつ覚えることというより、韓国の人が「そろそろ休もうよ」と言うときのやり方をひとつ覚えることに近いのです。

今日のクイズ

名節の料理をたっぷり食べたおじさんが、ソファにもたれながら言います。空欄に入る言葉として正しいものはどれでしょう?

“기름진 걸 너무 많이 먹었더니 속이 답답하네. ______ 한 그릇만 줄래?”

① 식해 ② 식혜 ③ 미숫가루 ④ 수정과

正解: ② 식혜 (sikhye) ご飯を食べたあと、消化を助けるデザートとして求められるのが식혜です。①は発酵させた魚の塩辛なのでこの場面には合いませんし、③はデザートというより夏のおやつ寄りです。④の수정과も名節のデザートではありますが、「속이 답답하다(胃がもたれる)」という言葉のあとにいちばんよく続くのは、ご飯粒の浮いた식혜を一杯、なのです。

この記事の語釈と例文は、韓国国立国語院『韓国語基礎辞典』(krdict.korean.go.kr) から引用しました。当該部分(翻訳を含む)は CC BY-SA 2.0 KR ライセンスのもとで利用・配布されます。